2013年12月31日火曜日

2013年映画感想まとめ

2013年に上映された(2013年中に封切りされたという意味ではない)映画の中から、自分が観た作品の感想をまとめた。観賞記録には含めたが、2012年中に一度観ているものの感想は省いている。また、映画祭上映作品を除き、試写等ですでに観ている2014年公開作品もここには入れていない。ランキングは末尾に。



******1月******


●1日『007 スカイフォール』 TOHOシネマズ日劇
Qよりマザコンシルヴァちゃんの方が個人的に好みであった。

●3日/14日/20日『レ・ミゼラブル』 おそらく5回目以降

●29日『アルゴ』 飯田橋ギンレイ
何でもっと早く観ておかなかったのだろうと思うくらい興奮して、劇場を出てすぐに、観るようにすすめてくれた人に「面白すぎた!」とメールした。色々議論はあるが、あれは「スパイアクションのたぐい」だと思っている。ラストの子供部屋にストーリーボードが飾ってあるカットが好きだ。

******2月******


●3日『ライフ・オブ・パイ』 ユナイテッド・シネマとしまえん
IMAX 3Dのスクリーン全体がゆらゆらと揺れる水面で、そこから水がこぼれ落ちてくるようだった。エンドロールのデザインも良いし、細部までハッとするような美しさに溢れている。何より「神」について描いているところが私好みだ。3Dで制作することの意味が充分に感じられ、それを技術そのもののすごさだけでなく表現にきちんと落としこんでいるところ、視覚と物語両方の面で観客に息を呑むような「体験」をさせているところを総合的に高く評価した。

●9日『スタードライバー THE MOVIE』 シネマサンシャイン池袋
総集編だということは分かって足を運んでいるのだが、ファンとしてはそれなりに楽しめたとはいえ「あれは何だったのかランキング2013」の1位に輝いてしまった。長い。

●9日『ジーザス・クライスト=スーパースター アリーナ・ツアー2012』 2回目 立川シネマシティ極上音響上映

●10日『ムーンライズ・キングダム』 TOHOシネマズ シャンテ
なぜ自分が泣いたのかよく分からないが、黄色くて生臭い、良い「子供と大人の物語」だった。宣伝ビジュアルなどを多く目にするとアレルギーが出てしまいそうなので、特に事前情報を入れずに観て良かったと思う。

●14日『ダイ・ハード/ラスト・デイ』 TOHOシネマズ日劇
原発や放射能をこんなネタに使うなんてうんぬん、みたいな話は「ダイ・ハードってそもそも、そういうエンタメじゃなかったっけ…アクション映画って一般の人にたくさん迷惑かけてるし…」という偏見しか持っていなかったので何も気にならなかった。でも別にもう一度観たくもない。

●16日『ゼロ・ダーク・サーティ』 TOHOシネマズ有楽座
退屈するところがなかった。単純に愛国的な話だとは思わない。名前も知らない、姿も分からない男を何かに取り憑かれたように追いながら、10年近くかけていびつになっていくジェシカ・チャスティンが圧巻だった。あの映像は『虐殺器官』を思い出す。

●24日『世界にひとつのプレイブック』 TOHOシネマズ六本木ヒルズ
原題のsilver liningという言葉の響きが好きだ。(ポジティブな意味で)映画らしい都合の良い展開はおとぎ話のようにも感じられるが、それが魅力でもあり、心に染みるユーモアと清々しさがあった。私が最も共感したのはロバート・デ・ニーロである。

******3月******


●1日『ジャンゴ 繋がれざる者』 新宿ピカデリー
タランティーノを特に好きだと思ったことのない私には、やはりハマるほどのものではなかった。殺し合い描写も別に大丈夫。でもタランティーノを楽しむセンスが欠けているのだと思う。「まぁ…面白いですね…でもこの撃ち合いシーンこんな長い必要はあるんですかね…」と内心思いながらぼーっと観て終わった。

●3日『ライフ・オブ・パイ』 2回目 ユナイテッド・シネマとしまえん

●9日『愛、アムール』 Bunkamura ル・シネマ
泣きすぎて息ができなくて苦しくて、もう怖くて二度と観られないと思うほどのトラウマ体験だったのに、心と体の準備が整えばまた観たいと思うほど印象深い。ストーリーライン自体に目新しさがあるというわけでもなく、(結末から始まるので)最初からどうなるか分かっているはずなのに、なぜあんなにも先に進むことが苦痛なのか。辛くて恐ろしくて醜くて美しくて愛おしくて、もうすべてのシーンと会話が私の感情を揺さぶり掻き立てるもので、今でも何に心を動かされたのか答えを見つけることができないのだけれど、映画が持つそのような力こそ、私が求めているものなのは確かだ。

●13日『レ・ミゼラブル』

●14日『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』 TOHOシネマズ シャンテ
美化された異国情緒とかテンプレートに沿った展開とか、そういうツッコミは無視するとして、出演者がみんな魅力的な、明るくて気持ちの良いお話だった。映画らしいおとぎ話感は嫌いじゃない。『愛、アムール』を観た直後だけに、対照的なこの作品に「老いって何だろう…」という問いを突きつけられるような気がしたのだった。

●20日『シュガーマン 奇跡に愛された男』 角川シネマ有楽町
ロドリゲスの数奇な人生そのものよりも、たった1枚のレコードが遠く離れた地に住む者の人生を変え、デトロイトと南アフリカ、ロドリゲスとレコード店主を結びつけたのだということがあまりに感動的だった。アニメーションの使い方も良い。

●23日/30日/?日『ザ・マスター』 TOHOシネマズ シャンテ/立川シネマシティ
初回はひたすら衝撃を受け困惑し、二回目は涙が出た。愛しているが、信じることはできない。絆は感じても、共に生きていくことはできない。救済と反発。支配と情。この先に災いしか見えないのをわかっていながら、それでも惹かれ合ってしまう、そんな関係の行き着く場所は。こういう矛盾した心と関係を愛しているから大好物なのかもしれない。選曲も実に素晴らしい。

******4月******


●6日『ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの』 新宿ピカデリー
夫婦2人のコレクター人生に焦点を当てていた前回と違って、本作は50×50プロジェクトに携わる学芸員やアーティストについての話とも言えるため、そこを退屈と思う人もいそうだが、私は美術館関係者や学芸員の話がとても興味深かったし、2人が一生かけて集めたコレクションが周りにどういう影響をもたらし、どんな財産として受け継がれていったかを描くのは筋が通っていると思った。

●14日『レ・ミゼラブル』 109シネマズ木場

●20日『ハッシュパピー バスタブ島の少女』 新宿ピカデリー
オーロックスもハッシュパピーも強い野生の生き物であるという点で、『南の果ての野獣ども』という題はしっくり来る。生も死も混ざり合った混沌とした力強さがあり、詩的で美しい作品だった。

●27日『天使の分け前』 銀座テアトルシネマ
ユーモアがありホロッとするところもありロード盗みムービーとして良いは良いのだが、愛する者とまっとうな人生を歩むために最後にやる犯罪って…アクション映画なら死亡フラグになりそう。甘い(厳しい、ではない)ことを言うならば、盗みと詐欺で得た金で本当に人生を立て直せるんだろうか…。

******5月******


●11日/26日/?日『ホーリー・モーターズ』 ユーロスペース
ミュージカルだと思ったら「カーズ」だった。私の乏しい表現力では何を言おうとしても「?」「!」「やばい」しか頭に浮かんでこない。観ているうちにだんだんと分かってきたと思ったら、直後にまた衝撃と困惑の渦に叩き落とされて…の繰り返し。ヴェンダースのPinaを観た直後にも同じような感覚をおぼえたのを思い出す。「行為の美しさ」というのは、肉体そのものもそうだけれど、 オスカーが続ける「意味や人格から切り離された純粋な演技」を指しているようにも感じられた。

●17日『劇場版 STEINS;GATE 負荷領域のデジャヴ』 角川シネマ新宿
宮野ぉぉぉぉぉぉぉぉ

******6月******


●14日『インポッシブル』 TOHOシネマズシャンテ
津波がホテルのプールサイドを襲うシーン。まだ大きな波そのものが視界にない段階からミシミシビキビキと観客席を包むように異音が聴こえはじめ、轟音になり、波がすべてを覆って暴力的に押し流していく…実際には地響きの音がするだけなのに、劇場の建物自体が揺れているように思える臨場感だった。長男役のトム・ホランドが生意気さと幼さの両方をバランスよく備えていてとても良い。しかし、冒頭と最後に堂々と出てくるチューリッヒ保険、依頼を完遂することなく終わった家族探しのメモ、もっと悲惨な状況にあるだろうがほとんど描写されない現地人の被害などが気になって仕方がなく、この家族だけの物語としては本当にお気の毒だし感動的ではあるのだけれど、ひたすら後味が悪かった。

******8月******


●?日『マジック・マイク』
男性ストリップはただセクシーに脱いでいくだけのものだと思っていたので「意外と客とカラミがあるんだなぁスゲーなぁ(そしてチャニング・テイタムは面白い顔してるなぁ)」と感心したが、正直なところ、ムキムキのセクシーな肉体に興味がないのでストリップシーンはあまり記憶に残っていない。ただのパッとしない青年だったアダムがマイクに人生を変えてもらい、最終的には裏切って彼の座を奪うという苦い展開が一番興奮した。字幕の「チ●ポ王」は別に伏せなくてもいいのでは?

●4日『風立ちぬ』 新宿ピカデリー
「ささとりにいきましょーよー」で泣いた。都合がいいとか、そんなことはどうでも良かった。おっとりのほほんとした天才と現実的で皮肉屋の親友、その設定だけでぐっと来るものがある。庵野声はどんな時でも深刻にならずのほほんとしているのがあの浮世離れした雰囲気に合っていて、マイナスの印象はなかった。何度も挟まれる夢の世界は何だか煉獄のようで、煉獄好きの私にはポイントが高い。

******9月******


●?日『スーサイド・ショップ』
前半のグロテスクで残酷なユーモアが魅力的だっただけに、後半の「自殺予防キャンペーン」か宗教法人がスポンサーのアニメーションかと思うような陳腐な展開と描写がとても残念だった。少年の働きや姉の恋によって彼の周囲が変わっていくという展開の説得力も弱く、とってつけたような印象しかない。

●29日『そして父になる』 TOHOシネマズ六本木ヒルズ
予想の範囲内に収まるけれど、丁寧で好感を持つ作品だった。私は保守的な家族観を信奉していないが、それでも、鑑賞中も鑑賞後も絶えず「家族を家族たらしめているものは血なのか? 自分ならどうするのか?」という問いが頭から離れなかった。それまで当たり前に信じていた「家族」の中にある情とアイデンティティ、その両方に真実が突きつけられてからの、動揺、不信、嫌悪、逃避、逡巡。2つの家族の全く異なるライフスタイル。どちらも説明的になりすぎずに、でも雄弁に語ってくるシーンの積み重ねが気持ち良かった。ドラマとはこういうものだよなぁと。ユーモアもある。

******10月******


●16日『死霊館』 新宿ピカデリー
パトリック・ウィルソンが出てくるということ以外は何も知らずに観たが、ホラー映画があまり怖くない私でもそれなりに楽しめた。何より美少女三昧である。家に取り憑いているやつは落ち武者のような見た目で笑えるので、一度正体を映してからは怖さが半減してしまった。冒頭に「唯一解決できなかった事件である」というような文章が出るので全員死ぬ展開かと思いきや、ハッピーエンドなので意味がよく分からない。

●17日『キャプテン・フィリップス』 TOHOシネマズ六本木ヒルズ(東京国際映画祭)
感動のヒューマンドラマまたはアクション大作というよりは、海上密室サスペンスものという感じを受けた。襲撃した方もされた方も幸せになれない苦い後味。長時間でも気が抜けない充分な緊迫感があるのだが、当日の疲れのせいか字幕のせいなのか、あまり心情面でストーリーにのめり込めず「へぇ…そうなんだ…すごかったね…じゃあ私、家でインターネットするね」という冷静な感想で終わってしまった。

●20日『もうひとりの息子』 シネスイッチ銀座
思っていたよりずっと、重さではなく希望を感じさせるものだった。両家庭の教育・経済水準が違えばまた異なる結果になるかもしれないが、描きたいものは悲劇ではないだろう。『そして父になる』が1人の父親に焦点を当てているのに対し、本作は十数年の人生を根底から覆された息子が「自分は何者なのか」を自分自身で見つけ選び取る過程に輝きがあり、似通ったストーリーでも受ける印象はだいぶ異なるものだった。イスラエル側の息子、ジョセフは少し幼さを残したかわいらしい青年で、その甘さも弱さも素直さも繊細さもとても良かった。ややラフで急な展開や、現実に比べて生やさしい視点など色々言うことはできるだろうが、この温かさも柔軟さも希望として提示されたものだと受け止め、その選択と作品の瑞々しい輝きを支持したい。

●22日『ホドロフスキーのDUNE』 TOHOシネマズ六本木ヒルズ(東京国際映画祭)
全身の毛が抜けるかと思うほどのおかしな興奮と高揚を感じた。会場がこれほど笑いに包まれる映画だとは思っていなかったし、泣きそうになる映画だとも思っていなかった。愛がある。愛。

 

******11月******


●2日『恋するリベラーチェ』 新宿ピカデリー
劇場を出てからも涙ぐみ、目の腫れがおさまらないのは『愛、アムール』以来か。時間と共に感情も関係も人自身も変わっていく中で、わずかに残された、変わらないままのものは何か。若さと美を失い、純粋さを忘れ、夢は敗れ、光は消え、蜜月が終わったように見える場所に果たして何が残されているのか。マイケル・ダグラスとマット・デイモンがそれを体現し、心が切なさと愛おしさで溢れる。

●24日『ウォールフラワー』 TOHOシネマズ シャンテ
学校に馴染めないはみ出し者のボクも、自分に優しくしてくれるエキセントリックな美少女も、幼い頃に受けた心の傷も、友達を自殺で失った過去も、音楽の使い方もロマンチックな夜のドライブも、どれもありがちでずるいネタだ。だが、それでも心から大好きと言えるような、言ってしまうような強い引力がある。はみ出し者だった人も、そうでなかった人も、チャーリーの目を通して高校生活を追体験することで、かけがえのない1日1日とそこに交わされる感情を自らのものとして感じるようになるだろう。ラストシーンの儚さと美しさは何ものにも代えがたい。

******12月******


●7日『ハンナ・アーレント』 岩波ホール
静かで力強く、情熱的で、しかし居心地の悪い緊張感がある。アレントの言っていることも反発する人の言い分も理屈としては分かるのだが、どちらとも「そうだそうだ!」と言い切れない自分が歯がゆく、悪かぁ…悪とは…と薄ぼんやり考えていた。演説シーンは引き込まれるし、最後まで立場の違う人間同士の葛藤があって良かった。"Thinking gives people the strength"、力のある言葉である。

●14日『ゼロ・グラビティ』 ユナイテッドシネマとしまえん
手に汗握るどころではない、この緊迫と臨場感。これまでの視聴体験を塗り替える、まったく新しい「映画」を作り出したことをまず尊敬する。話自体はストレートでツッコミどころもないわけではないが、圧倒される宇宙空間の描写だけではなく、ライアンが絶望的状況と孤独の中でどう闘い精神を保っていくのかという心理変遷に強く惹きつけられた。静寂から始まる音の使い方もとても良い。"Angels Are Hard to Find"を聴くと、今でもコワルスキのことを思い出してじんと来る。


******ランキング******


1位:ライフ・オブ・パイ
2位:愛、アムール
3位:ザ・マスター
4位:恋するリベラーチェ
5位:ホーリー・モーターズ
6位:ホドロフスキーのDUNE
7位:ゼロ・グラビティ
8位:シュガーマン
9位:ウォールフラワー
10位:ゼロ・ダーク・サーティ
次点:アルゴ

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